不器用な殉愛


 剣を持つ右腕に傷をつけられ、兵士が床に崩れ落ちる。さらに次の兵士が入ってこようとしたが、彼もまたジゼルの剣に切り倒された。

 ちっとジュールが舌打ちする。兵士達を押しのけ、彼が自らこの部屋に足を踏み入れようとした時——扉の裂け目からジュールが顔をしかめるのが見えた。

「——時間切れか。行くぞ!」

 彼の言葉が、何を意味しているのかはわからなかった。だが、気が付いた時には戦の物音がほとんど聞こえなくなっていた。

 破壊された扉を見つめ、ジゼルと身を寄せ合う。腕に怪我を負わされた二人も、ジュールと一緒に引き上げていったようだった。

「——終わったのでしょうか」

「どうかしら。ルディガー様の側が勝ったと思いたいけれど」

 自分で書いた絵図は限りなく正確だとは思うが、戦の場では何があっても驚かない。ルディガーが敗北する可能性だってないとは言い切れないのだ。

 今さらじたばたしたところでしかたない——城を抜け出た瞬間に覚悟は決めたのだ。

 本当はジゼルを同行させるつもりはなかったのだが、いざという時には彼女だけでも逃がさなければ。

「セヴラン軍の兵士達がこちらに来るようです。きっと、勝ったんですよ!」

「……そう」

 ディアヌはそっと息をついた。ルディガーの軍が勝ったのならばそれでいい。

「お父様はどうなったのかしら」

「わかりませんね。姫様……でも、とらえられるより殺された方がまだましなのでは?」

「ジゼル、それ以上は」

 ディアヌは人差し指を口に当て、ジゼルのそれ以上の言葉を封じた。