不器用な殉愛


 多数の足音がこちらに近づいてくる。

 そして扉の外からは、何かを叩きつける音が響いてくる。がん、がん! とさらに叩きつけられ——そして、ついに扉にひびが入った。外から斧が叩きつけられているようだ。

「……ジゼル、どうしたら」

「お守りします。命に代えても」

 ジゼルにそんなことを望んではいない。たしかに、ルディガーのところに赴く際は共に危険を冒してもらったが、ディアヌの代わりに命を落としてもらいたいとは思わなかった。

「——下がれ! ここは、ディアヌ王女の部屋であるぞ!」

 扉の割れ目がさらに大きくなった。そこから上半身を割り込ませようとした兵士にジゼルが剣を突きつける。

「——かまわん、扉を破れ!」

 兵士達の後ろから聞こえてきたのは、ジュールの声だった。戦場にいるはずの彼が、なぜ、こんなところにいるのだろう?

「——入ったら、切る!」

「ディアヌ——お前は、国を売ったな。まったく、思い切ったことをしたものだ」

「……私は、自分がなすべきだと思ったことをしただけです」

 ディアヌの言葉に返ってきたのは、はっという馬鹿にしたような声だけだった。

「——しょせん、下賤な女の娘ということか」

「な、なんてことを」

 ここで母のことを出されるとは思っていなかった。

 下賤な女——その言葉は、母にはあてはまらないはずだ。母は好んで父に嫁いだわけでもないのに。

 その間も、扉には何度も斧が叩きつけられ、そしてついに完全に破壊された。そこから入り込もうとしてきた兵士に、ジゼルの剣が叩きつけられる。