不器用な殉愛

 誰にも見とがめられることなく、無事に部屋に戻ることができた。ジュールが何か気づいているのではないかと思っていたけれど。

 その夜は、ジゼルと二人、ベッドの上に並んで座り、ただ夜が明けるのを待っていた。

 そして夜明け間近——あたりが薄明るくなりかけてきた頃。遠くから、声が聞こえてきた。

 弾かれるように立ち上がったディアヌは、窓のところに駆け寄る。

 あの絵図は役に立ったのだろうか。

「——姫様」

「……怖いわね。本当なら、私……もっとできることがあったのではないかしら」

 ディアヌは視線をもう一度窓の外へと向けた。だが、彼女の瞳に映るのは外の景色ではなかった。

 やるべきことは、もう終わった。あとは、結果が出るのを待つだけだ。

 そして、今日中に決着がつくだろう。

 決着がついた、その時には自分がどうなろうがかまわない。

「——姫様、兵がこちらに向かっているようです」

 扉のところに立っていたジゼルが、緊張した表情になる。彼女は剣を引き寄せた。

 ディアヌも自分の剣を手元に引き寄せる。

 もし、王族が城を捨てようとしているのなら——ディアヌは殺されるのではないだろうか。

 殺されてもしかたのないことは、してきた自覚もあるけれど。

 部屋の扉に鍵もかけてはあるが成人男性ならばたやすく破ることができるはずだ。

「——扉の前に家具を。少しは時間が稼げるでしょう」

「ええ、そうね」

 二人がかりで鏡台を移動させ、さらに棚も押し付ける。扉が破られたら、こんなものは何の役にもたたないだろうが。