不器用な殉愛


 前に出ようとするジゼルを手で制し、フードを払い落とす。

「……ディアヌ」

 彼が、名前を呼んでくれた。忘れられていなかった——また、胸が震えた。ジゼルに気付いたルディガーとジゼルが言葉を交わしかけるのを、再び手で制する。今は時間が惜しかった。

「私の願いを聞いていただけますか、陛下?」

「聞くだけなら」

「では、申し上げます。わが父マクシムの死——そして、今のシュールリトン王家の滅亡を」

 父と一族の滅亡を願うディアヌの言葉に、室内がわずかにざわついた。

「それは俺もなんとかしたいと思っているが、なかなか難しい。ノエルの話では、それを可能にする方法を持ってきてくれたとか?」

「人払いをお願いはできませんか?」

 もう一度問いかける。これからのことは、誰にも見られたくなかった。

 誰に見つかっても困らないよう、隠してきたものをこの場で取り出すのはためらいがある。先ほど、身体検査をされた時にも、身体検査をした女もこれを見つけ出すことはできなかった。

 マントを外し、ジゼルに渡す。ドレスのボタンを外してずらす。ジゼルの手を借りてコルセットを外し、テーブルの上に置いた。

 片方の手でさりげなく胸のあたりを覆い、ふくらみが見えないようにしている様に、室内にいる男達は目のやりどころに困ったようだ。

 進み出たノエルが、コルセットを切り開く。そして——中から出てきたのは、城に戻ってからの間こつこつと作ってきた絵図だった。