不器用な殉愛


「とりあえず、中に入れ。武器を持っていないか改めさせてもらう。その間に、ルディガー様に話をしてみよう。そこのお前、剣をよこせ」

「——これは!」

「ジゼル、お渡しなさいな。私の剣もお持ちください」

 最低限自分の身ぐらいは守れるといい。ディアヌの剣とジゼルの剣を取り上げ、男は中に入るように合図する。

「俺の名前はノエル。ルディガー様の側近だ」

 ルディガー、という名前を聞いただけで、どうしようもなく胸の鼓動が高まる。

 ——馬鹿みたいだ。

 これから、彼にしようとしている提案を考えたなら、こんな風に胸をときめかせている場合ではないのに。

「お会いになるそうだ。ついてこい」

 やがて、ノエルと名乗った男が戻ってくる。ディアヌはフードを深くかぶったまま、彼についてきた。ディアヌの背後を守るようにジゼルがついてくる。

 やがて、部屋に通され、その先にいる彼を見て、ディアヌは思わず彼の名を呼びそうになった。

 会いたかった——十年前、彼が修道院を去った時から。若き王として彼の名を聞くたびに、会いたくて会いたくてしかたなかった。

 幼かったあの日、命がけで守ってくれた人——。

 だが、彼は険しい顔をしてこちらを見ている。

「——お人払いを」

 今の自分の表情は見せたくない。

「人払いはしない。それに、人に話を聞いてもらおうというのに、フードをかぶったままというのはあんまりじゃないか」

 ——ああ、やはりルディガーの声だ。

 あの頃より少しだけ低く、彼が大人の男になったのだと、顔を見なくてもわかる。胸がなってきた。