不器用な殉愛

 夜の闇に紛れて馬を走らせる。セヴラン軍が陣を張っている場所に到着し、馬を下りた。

 ディアヌの方は、マントのフードを深くかぶり、顔を見せないようにしている。ジゼルが近づいていくと、門のところで待っていた男がこちらに厳しい目を向けた。

「……シュールリトン城の守りを崩す手段をお教えします。ルディガー王に合わせてください」

 ジゼルがそう告げると、信じられないというように男が首を振る。ディアヌが近づくと、男は警戒する表情で腰の剣に手をかけた。

「この腕輪を——渡していただけませんか。王の側近の方なら、わかってくださると思います」

 男に渡したのは、父の紋章が彫り込まれた腕輪。その紋章をじっくりと眺め、男は仲間を呼んだ。

 仲間に腕輪を渡し、何事かささやく。腕輪を渡された男が、姿を消すのを祈るような気持ちで見送った。

 もし、ここで話を信じてもらえなかったら。

 緊張のあまり、自分の鼓動が耳の奥でやかましく音を立てている。せわしない呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着けようとした。

 やがて、今まで二人の相手をしてくれていた男達より、上質の衣類を身に着けた男がやってくる。

「——この腕輪、本物か」

「確認はできたでしょう? さあ、会わせてもらえるの、もらえないの」

 ジゼルが口早に問う。夜明け前に戻らなければ——父に、気づかれてしまう。ディアヌ達が、留守にしているのを気づかれるわけにはいかなかった。