不器用な殉愛

 ルディガーの率いるセヴラン軍が、すぐそこまで来ている。

 シュールリトン王族達は、皆、あわただしく動いていた。ディアヌの父であり国王であるマクシムも、ここまで来ればもう引くわけにもいかない。

 王太子であるジュール、第二王子のヴァレリアン。二人とも、いつでも出られるだけの準備はしていた。

 彼らの率いる兵士達には、どこか諦めの色が見える——ここまで、負け戦を重ねてきたのだから当然だ。

「ヒューゲル侯爵、いつもどったのですか」

「姫様」

 城壁のところから、外の様子を眺めていたら、ディアヌのところにヒューゲル侯爵がやってきた。

 彼は、元はトレドリオ王家に仕えていた貴族だった。父がトレドリオ王家を滅ぼした際、真っ先にこちら側に着いたと聞いている。保身のためにならば、自分の主も簡単に裏切るのだと、ディアヌは彼があまり好きではなかった。

 もっとも、彼女がそんなことを言える立場ではないのもまたわかってはいたけれど。

「ひと月後には、この城も落ちるでしょうな」

「そんなに時間がかかりますか? ルディガー王でも?」

「この城の守りは強固です。トレドリオ王家だった時代、私が手をかけて整備したのですから間違いありません」

「……そう」

 この人に、どう対応したらいいのかディアヌにはわからなかった。彼が、もっと抵抗していたならばトレドリオ王家は滅亡しなかったかもしれないと聞いている。