「色仕掛けのつもりか?」

 と今度は誰かがからかう声を上げる。

 その言葉には耳も貸さず、ディアヌは耳を赤く染めながらも身に着けていたものをずらす。そして、ジゼルの手を借りてコルセットを外した。

「どなたか、ナイフを貸してください」

 周囲を見回すも、誰もナイフを貸してくれる気配はない。冷静に考えれば、それも当然だ。

「——では、どなたか、ナイフでここを切ってはいただけませんか」

 身に着けていた下着を若い男性の目の前に晒すのはとてつもない羞恥だが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 服からこぼれ出た乳房を片手で覆い隠すようにしながら、テーブルの上にコルセットを置く。

 ここで、動揺している様子など見せるわけにはいかなかった。

 片方の手でさりげなく胸のあたりを覆い、ふくらみが見えないようにしている様に、室内にいる男達は目のやりどころに困ったようだ。

「では、俺が」

 言い出したノエルが、ディアヌの指示する場所を切る。彼らの目が、ノエルの手元に集中している間に、ずらした衣服を肩のところまで戻した。

「——ありがとう。あとは、私が」

 ノエルの手を離れたところで、切れ目の中に指を入れる。そこから引き出したのは、一枚の布だった。