【短】甘すぎて素直になれない


「本当はずっと言いたかったんだ。愛花」

「なにを?」

「誕生日、おめでとう!」

「バレンタインデーに誕生日とかふざけてるでしょ」

「そんなことない。こんなに愛が溢れる日に生まれたんだ。すごいよ。愛花って名前の通り!」

「それ、言ってて恥ずかしくない?」



 咲也は苦笑い。
 そうだよね。こんなにツンツンしてたら、話しづらいよね。わかってるのに、口が止まらない。



「恥ずかしいっていうか、ドキドキしてるかな」

「それ、恥ずかしいんじゃん!」

「違うよ」


 自然な動作で、咲也の手がわたしの頬に触れた。驚いて、何が起こったかわからなくて、わたしはただ咲也を見つめていた。


 駅を勢いよく通り過ぎる快速電車が、わたしの髪を揺らして咲也の手を触っている。