【短】甘すぎて素直になれない


 乗るはずの電車を見ないふり。咲也に誘われて、誰もいなくなったベンチに座る。
 こういう時の距離感がわからなくて、わたしは少しだけ離れた。



「誕生日はバレー部のやつに聞いた。部の資料作りとか何とか言ってさ」

「嘘が上手いね」

「褒めてる? 貶してる? まあ、いいや」



 可愛くない。わたしってば、本当に可愛くない。
 嘘までついて、わたしの誕生日を調べてくれたんだよ? 嬉しいよ。嬉しいに決まってるじゃない。


 なに、わたしひねくれてるんだろう。
 それすらも、わからなくなってきた。



「愛花は誕生日祝ってくれないのが嫌なわけ?」

「そんな子供じゃないし!」

「じゃあ、どうして?」

「言いたくない」



 違う。そんなんじゃない。
 ただ、そう。わたしは咲也が気に入らないだけ。咲也が、嫌い。