駅のホーム。電車を待っていたわたしたちは無言。
 それはわたしの不機嫌のせいなんだけど、もやもやしたまま別れるのは嫌だってちょっと思う。



「咲也、さ。バレンタインデー……好き?」



 だからって、なんてことを聞いてしまったんだろう。
 混乱しているのかもしれない。結局、わたしもイベントに踊らされているみたい。


 本当に情けない。



「好きだよ」



 咲也はきっと、そう言うと思っていた。
 もっともっと不機嫌になっていく。そんな自分が嫌いになるから、バレンタインデーは嫌い。



「だって、バレンタインデーは愛花の誕生日だろ? だから好き」

「……え?」



 咲也、今何て言った?
 もしかして、わたしの誕生日を知っていてくれたの? 教えたことなんて、なかったのに。