「愛花は去年も機嫌悪かったよな」

「そう、だった?」



 気づいていたんだ。
 意外と空気読むし、周りを気遣うんだよね。
 あ、だからみんなに優しいのかな。



「わたし、バレンタインデー嫌いだから」

「嫌いなの?」

「嫌い!」



 周りに流されないで染めたりパーマかけたりしない自然な黒髪が好き。
 わたしの話を聞いてくれる可愛い耳が好き。
 優しく笑う口が好き。
 ちゃんとわたしを見てくれる目が好き。


 咲也が、大好き。


 でも、バレンタインデーに告白なんて馬鹿みたいに踊らされたくない。
 そんなイベントに振り回されるなんて、嫌だ。


 余計にバレンタインデーが嫌いになりそうだから。