【短】甘すぎて素直になれない



「来年から愛花以外のチョコは断るよ」

「いいよ。そんなことしたら、わたしの敵が増えるじゃない」

「じゃあ、どうしたらいい? どうしたら、バレンタインデーに機嫌良くしてくれる?」



 咲也は本当にバレンタインデーが好きなんだ。


 そんなにバレンタインデーに機嫌良くして欲しい?


 つまらないイベントだと思うんだけどな。でも、ちょっと嬉しいかも。



「毎年、わたしの誕生日祝ってくれる?」

「当たり前だろ」

「だったら、わたしは毎年……咲也に想いを伝える」

「え?」



 わたしは鞄から箱を出す。


 手作りじゃない。その辺のコンビニで売ってた、本当に可愛げのないチョコレート。
 でも、わたしらしいって思ってたから。