お前の唇、奪っていい?



「それに奥村さんも将来の相手をもう決めるっていうのは、流石に...」


「そうなのか?菜々子」


「あ、えっとあたしはその、祐誠くんならいいっていうか...」




は?


何言っちゃってんの、この人




「まぁ、竹下くんも突然の事で驚くのも無理はない。だが少し考えてみてくれないか?
とりあえず昼をどこか食べに行こう、君も一緒に」


「え、いや俺...」




このあと用事が、と言おうとしたところで、口を噤んだ


流石に社長の誘いを断る訳にはいかない




俺はモデル人気トップなんて言われてるけど、モデルとしてはまだまだ未熟者だ


だからそんな俺が社長の誘いを断るなんて、出来るわけがない


そもそも、社長に誘われること自体すごい事なんだから、尚更断りにくい




「大丈夫です...」


「ほんとに平気?祐誠くん、この後予定ない?」


「あぁ、ないよ」




その時、一瞬、奥村さんの口元が弧を描いたように見えた




「そっか。良かった!!じゃあ行きましょ?祐誠くん!おじ様、あたしお寿司食べたい!」