お前の唇、奪っていい?



そして、迎えた当日ーー




ベッドから起きて歯磨きをしていると、ふとスマホがピコンッと鳴った


見てみると、それは祐誠からでーー




"今から事務所の本社向かう。あのカフェで待ってろ、終わったら迎えに行く"




あのカフェっていうのは、毎年お墓参りが終わったら必ず寄るカフェのこと




あそこはすごくオシャレで、サンドウィッチが美味しいんだ




今日は、おしゃれしていこうかな...お墓参りだけど、祐誠とふたりだけだし...




それに祐誠はかっこいいから、地味な格好で行ったら祐誠が可哀想だしね




「って、祐誠なんだから可愛い格好する必要ないし...お、お父さんに会いに行くから可愛くして行きたいだけだし」




朝ごはんを食べて、部屋に戻り、クローゼットを開く




30分ほど悩んだ末、白のブラウスに膝より少し上のスカートにした


髪も少し巻いて、化粧は薄めに




「はぁ...結局少しおしゃれしちゃった」




時計を見ると、10時を示している




「行ってきます」




ヒールが低くて歩きやすいパンプスを履く




今年もお母さんは仕事だから、お墓参りには行けない


だからお母さんの分のお線香もあげなくちゃ




その時、私はもちろんこの後に起こる事を知るはずはない




そして、私と祐誠の大事な人が、帰ってくることも、知らない