さて、どうやってメレンダに近付こう。
日が落ちた帰り道、ポケットに手を突っ込みながら歩く。


朝の挨拶から始めようか。時間はかかるが自然に距離を縮められる。


改札に定期を入れ、出てきた定期を取る。
ぺらぺらと定期を揺らしながらホームに向かう。


定期入れに収め、手を離すとリールがビュンッと縮み、定位置に戻る。
あと五分か。小さな駅なので電工掲示板は無い。だから、後ろの掲示板に書かれている時刻表と腕時計を合わせて見る必要がある。


独特の足音が聞こえてきた。まだ五分あるのに速歩きしているのはメレンダだった。
電車を待つ間、お菓子を食べている。右足の爪先をトントンと動かしていた。


そうか、同じ電車に乗るんだった。
横いいかな?と聞いて、その調子で……駄目だ、そこそこ混んでいないと、横に来るのは不自然だ。
うーん。もう、当たってくだけろ!


僕は少し右に移動し、メレンダに話しかける。


「メレンダ、そのグミ美味しいよね」


「うん。でも電車の中では食べられないから、今食べておくの」


僕の方を向いて微笑んだ後、また食べる。これで良かったんだ。メレンダにも怪しまれていない。
真剣に考えた僕に、何やってんだよと言いたくなった。


踏み切りから警報が聞こえる。左から聞こえるから、もうすぐ電車に乗れる。
メレンダも気付いた様で、一気に三つほど入れた。指を右に滑らせ袋を閉じる。


カンカン、もぐもぐ。この二つが重なると、何だか面白くて、可愛い。


一人降りてきた後、隙間を乗り越え暖かい車内に入った。