職員室の前には同じクラスの女子がいた。


「緋梅君。ごめんねー、嘘ついて」


ごめんとは思っていなさそうな、軽い調子で言った。
取り巻きもにやにや笑っている。


「何のためにこんな嘘を?」


「あの子の近くだと教えてくれないかなーって思って。大丈夫、聞くだけじゃなくてこっちからも教えるよ」


腰に手をあて、ヘラヘラと笑う。信用ならないが、もう少し話を聞いてみようか。


「何のことを?」


「メレンダのこと」


気付かれた!?
女子の勘というものは恐ろしい。交渉にも使ってくるのだ。


「わかったよ。で、質問は?」


「緋梅君、Geometric unionのメンバーだよね?なのに軽音楽部もないこの学校に入学した理由は?」


答えづらい質問をしてきた。
Geometric unionという言葉自体聞きたくなかった。


「あ……資格を取りたかったから。就職に有利そうだと思ったんだ」


「ふーん。バンド内でトラブルがあったから、じゃないんだね」


本当はそれなんだが。


「色々聞きたいけど、今日のところはここまで。早くした方がいいかもしれないし」


「早くした方がって……」


「メレンダ、なんか外に呼び出されてた。私たちは足止めを頼まれてたの。ただ事じゃなさそうな雰囲気だったよ」


眉を寄せ、不安そうに言った。
先生に見つかったら怒られるが、堪えきれずに走り出した。
とにかく外を走り回れば見つかる!