イタリアが好き、ということで、駅ではティラミスの話をしていた。


「あのコンビニのは美味しいよね。昔、賞味期限切れてるのに食べちゃったことがあったの。それでも美味しかった」


「ちょっとまって、お腹とかは大丈夫だった?」


「うん、大丈夫。一日くらいならなんとかなるよ。試してみたら、とは言えないけど……」


僕は怖くて食べられないな。
スナック菓子とかならいけるけど、要冷蔵のスイーツだ。
メレンダは少しのチョコでもティラミスでも、無駄にすることを嫌がるようだ。


「でもメレンダも、賞味期限が来るまで置いておくことがあるんだね。すぐ食べそうだと思ってた」


「いつもはすぐ食べるよ。けどこの時は、旅行に行くのを忘れてて……帰ってきた時には期限切れだったの」


旅行前の買い物には注意しなければいけない。
後で食べようと思っていたら、もう出発の日になったりするのだ。
僕は六年生の修学旅行で経験していた。


そんなことを思い出していると、メレンダが両手を合わせて言った。


「そうだ、ギター聴くのはどこにする?学校にギター持ってくるの大変だと思うし……」


ドキッとしたが、すぐに落ち着いて考える。
あそこ以外ならどこでもいい。


「そうだな、僕の家がいいんだけど……今週の土曜日はどう?」


「空いてるよ」


「じゃあ、土曜日に僕の家で。駅の前で待ち合わせしよう」


僕が降りる駅の前に8時。
メレンダはスマホを取りだし、メモしていた。


メレンダが電車を降りた後、カバンに手を乗せながら、次の駅だなと思っていた。
しかし、今日は降りなかった。ギリギリまで迷ったが、わざと乗り過ごした。


そして、あの日から絶対に降りなかった駅の名前が聞こえる。


ここまで来たならと、ホームと電車の隙間を乗り越えた。