絶望的な生涯を想定しながらも、それでも捨てきれない一縷の望み。それは、この胸に秘めた王子への嘆願書ーー。

一体どうすれば王子と接触出来るのだろう?

だけど。運よく出会えたとしても、無礼者として衛兵に、その場で切り捨てられる事も......。

でも、もしも王子様が衛兵を止めてくれたら......?そして、嘆願書を受け入れてくれたら?

それとも、私の行動が彼を激高させる?

想像もつかない敵国の王子の人物像に思考を巡らせながら、私は果たして何処へ向かえば王子と出会えるのかと、擦り切れた布靴を履いた足で、裕福な大国の城下町の往来の中にいた。

城下町の大通りは、おそらく夜中から降り続いているであろう雪により、規則正しく敷き詰められた石畳に真白い綿雪の絨毯が敷かれていた。

その砂糖にも似た愛らしく甘い絨毯を、忙しなく右往左往する色とりどりの足がためらいもなく踏みつけている。

「ねぇ、お兄さん。旅の人? 随分と物入りな格好ね。一体どこから来たの?」