隣でぶつくさ言ってる男を横めに見てみる。

透き通るような肌、サラッサラの色素の薄い茶髪なのか?これ。
スっと鼻筋の通った高い鼻。
くっきり二重のアーモンドアイ。
その奥の瞳も髪色と同じ薄いブラウン。
唇に口紅でも塗ってんですか!?ってくらい血色のいい唇。


ほんと黙ってればおとぎ話に出てくるような王子様。


でも口を開けば…

「そうだ櫻野、今日お前と飲んでやるよ」
残念極まりない。

「結構です」

「なぜ断る?俺と飲みたがってる女の子沢山いるぞ」



「じゃあその飲みたがってる子達と飲めばいいじゃん」

「なんだ?嫉妬か?」

「あんたの脳みそどうなってんのまじで」

ほんとに会話のできないこいつに毎回悩みは尽きない。
こいつどっかで頭のネジ落としてしたのかな。


「俺はお前の失恋話聞いてやるって言ってんだよ」


「いや、あんたに話しても疲れるだけだから」

「あー確かにお前の元カレあれだよな。俺と同じ部署の貝塚くんだよな?
俺が言ってやろうか?櫻野が相当落ち込んでてって…」

「分かった分かった行くからまじで貝塚君には言わないで」


「じゃあ決まりな、いつもの店で」

そう言うとあいつは無駄に長い手であたしとナオの空になったトレーと皿を取って去っていった。


「ねぇ、やっぱ蓮さん華に気があるとしか思えないんだけど…」
ナオは毎回お決まりの言葉を口にする。


「無いでしょ」
そしてあたしもお決まりの言葉。


ほんと超絶苦手。あいつ。