アイスを食べながら陽菜が私に問いかけた。


「ねぇ、カナってさ。誰かを好きになったことある?」

「ん? あるよ」

「え!? 誰?」

「しょうやくん」

「翔!?」

「違う! 翔也じゃなくて、吉永 将弥くん!」

「それ、私が貸した漫画の主人公じゃん!」

「そうだよ。かっこいいから好き!」

「そうじゃなくて…」


陽菜は呆れたようにため息をついた。


「二次元じゃなくて、三次元で。実在する人でってこと」

「あー、それならない」

「翔のことも?」

「翔也はお兄ちゃんみたいな感じだし、普通に幼馴染だよ」

「矢野兄弟は?」

「侑斗さんは大人だし、和希くんと柚希くんはちょっと怖いもん。いい人たちなんだけどね…まだ少し警戒してる。どうしてこんなこと聞くの?」

「……私が言うべきことじゃないかもしれないけど、カナだって薄々気づいてるんでしょ?」


陽菜の表情は真剣だ。
暑かったはずなのに、なぜか涼しく感じる。空気が冷たい。