料理を食べ終わり、車に戻る。

「ごちそうさまでした」

「いいえ」

「それで、これ」

財布から1万円札を取り出す。

支払いはいつの間にか、エリックさんがしてくれており、
金額は分からないが、とりあえずと差し出す。

「いいですよ」

「駄目です」

私はお金を差し出した手を、引っ込めなかった。

「彼氏でもない人に、おごってはもらえません」

「では、彼氏ならいいのですか?」

その言葉に、腕が止まる。

「お金はいりません、その代わり、キスがしたい」

「エリックさん」

「エリックでいいです」

「エリック・・・」

「キスしても?」

そう言われて、うなずき、目を閉じる。

唇が重なるのを感じた。


夢じゃないよね・・・


「このまま泊まります?」

そう言われて、あわてて目を開ける。

「駄目です!」

彼は、わかりました、と優しく微笑んでくれていた。

「家まで送ります、住所教えてもらっていいですか?」

「あ、はい、お願いします」

そう言って住所を口にする。


あー驚いた。

今日、何回心臓ばくばく言っているだろう、
私の心臓、家着くまで持つかなと、
少し不安になりながらも、運転するエリックの横顔を眺めていた。