切れ長の目が朋花を捉えて口を開く。

「あの~。何か?どちら様でしたか?」

 鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。

 そんな………。
 記憶から抹消したくなるほどの付き合いだったってこと?

「すみません。失礼だったようですね。
 俺、何年か前に事故にあった後遺症で記憶が虫食い状態なんです。」

 記憶が虫食い……つまり私との記憶がないってこと?

 ものすごく寂しくなって、だけど事故だったのなら仕方ないよねと思い直した。

「覚えてないことがこんなに申し訳ないなんて。
 そんなに悲しそうな顔をしないでください。
 俺とはどういう知り合いですか?って変な質問ですね。」

 顔を崩して笑う隆弘は5年前と何も変わらなかった。
 精悍な顔立ちが笑うと少年みたいになって、そこが好きだったな。

「大学の頃の…。」

「そうだったんですね。
 …あの。良かったら、この後、聞かせてもらえませんか?
 忘れてるなんてもったいない気がして。」

「えぇ。私で良ければ…。」

 朋花の返事を聞いて、隆弘はホッと息をついた。

「良かった。
 ナンパみたいで冷や冷やしました。
 大学の頃の俺は信用できる奴だったみたいですね。」

「ふふっ。それはもちろん。」