「綺麗だったね。翔子。」
朋花の隣には隆弘。
今日は翔子と瑛士の結婚式。
「あぁ。そうだね。」
隆弘は優しく笑った。
結婚式が終わって式場を出ると2次会までどうしようかなぁと歩く。
プップーッ。
軽いクラクションに振り返ると車の中の人が手を振った。
「佐野主任!」
どうしてここに……。
あぁ。今日、ここで結婚式だって話したかも。
佐野主任とは今までと何も変わらないただの同僚としての関係だった。
会社での戯れ合いも、そしてたまに飲みに行くことも変わっていない。
あの、たった一度のキスもお互いに無かったことになっていた。
「2次会は行くの?
それまでお茶でもしない?」
「え……。でも………。」
言葉に詰まる朋花に隣にいた隆弘が口を開いた。
「俺はいいから行っておいでよ。」
隆弘に勧められていると後ろから隆弘の腕に絡みつく人影。
翔子の後輩でもある奈々だ。
「黒谷先輩!
藤田先生は私が責任を持って一緒に過ごさせていただきます!」
奈々も教師だったのには驚いた。
たまたま隆弘と同じ中学に赴任したらしくて、前に見かけた時も学校の関係で出かけていたらしかった。
「いや……。
俺、ちょっと瑛士に用があるし。」
私に軽く手を振ってから、そそくさと結婚式場へと戻っていく。
奈々のことを煩わしそうにしてるなんて昔は気づけなかったかもなぁ。
「待って下さい!藤田先生!」
奈々は軽く朋花達に会釈してから慌てて追いかけていく。
朋花は懐かしく2人の背中を見送った。
「で、そこの綺麗なお嬢さん。
俺とお茶してくれるの?」
佐野主任はいつの間にか車から降りていた。
車のドアを開け、長い手足を持て余すようにドアにもたれかかってこちらを伺っている。
「佐野主任までスーツでどうしたんですか?」
「彼氏くんに対抗しないといけないだろ?」
不敵な笑みを浮かべられてどんな顔を返していいのか分からない。
どこまで本当なんだか……。
促されるまま助手席に乗り込んだ。
「佐野主任って車お持ちなんですね。」
車を運転する佐野主任は似合っていて、なんだか遠い存在に思えた。
「いや。これは借りてきた。
迎えが徒歩なんてかっこつかないから。」
居心地が悪そうに頭をかく佐野主任は髪までカットしていて、いつものだらしない感じがなくなっていた。
だらしなくてもかっこいいと思っちゃうくらいの人なのに、なんだかずるい。
あれから心配してくれた佐野主任には元彼と復縁したことは伝えてあった。
「どうして迎えに来てくれたんですか?」
「どうしてって……それ聞くか?」
再びの居心地が悪そうな佐野主任は口元を手で覆ってそっぽを向くと外を眺めた。
そして外を見たまま呟くように言った。
「実はな……。
今度、見合いすることになってな。」
そっか。そうなんだ。
「お幸せに。」
新調していそうなスーツ。整えられた髪。
小綺麗になったのには見合いのためなのだろう。
「あぁ。ま、まだ会ってもないがな。」
信号待ちの車はまだ動き出さない。
静かな車内は小さく洋楽がかかっている。
それを口ずさむ佐野主任に心からの言葉を贈った。
「佐野主任なら大丈夫ですよ。」
信号が赤から青に変わって動き出した。
佐野主任とは別々の道を歩く、その始まりみたいだった。
朋花の隣には隆弘。
今日は翔子と瑛士の結婚式。
「あぁ。そうだね。」
隆弘は優しく笑った。
結婚式が終わって式場を出ると2次会までどうしようかなぁと歩く。
プップーッ。
軽いクラクションに振り返ると車の中の人が手を振った。
「佐野主任!」
どうしてここに……。
あぁ。今日、ここで結婚式だって話したかも。
佐野主任とは今までと何も変わらないただの同僚としての関係だった。
会社での戯れ合いも、そしてたまに飲みに行くことも変わっていない。
あの、たった一度のキスもお互いに無かったことになっていた。
「2次会は行くの?
それまでお茶でもしない?」
「え……。でも………。」
言葉に詰まる朋花に隣にいた隆弘が口を開いた。
「俺はいいから行っておいでよ。」
隆弘に勧められていると後ろから隆弘の腕に絡みつく人影。
翔子の後輩でもある奈々だ。
「黒谷先輩!
藤田先生は私が責任を持って一緒に過ごさせていただきます!」
奈々も教師だったのには驚いた。
たまたま隆弘と同じ中学に赴任したらしくて、前に見かけた時も学校の関係で出かけていたらしかった。
「いや……。
俺、ちょっと瑛士に用があるし。」
私に軽く手を振ってから、そそくさと結婚式場へと戻っていく。
奈々のことを煩わしそうにしてるなんて昔は気づけなかったかもなぁ。
「待って下さい!藤田先生!」
奈々は軽く朋花達に会釈してから慌てて追いかけていく。
朋花は懐かしく2人の背中を見送った。
「で、そこの綺麗なお嬢さん。
俺とお茶してくれるの?」
佐野主任はいつの間にか車から降りていた。
車のドアを開け、長い手足を持て余すようにドアにもたれかかってこちらを伺っている。
「佐野主任までスーツでどうしたんですか?」
「彼氏くんに対抗しないといけないだろ?」
不敵な笑みを浮かべられてどんな顔を返していいのか分からない。
どこまで本当なんだか……。
促されるまま助手席に乗り込んだ。
「佐野主任って車お持ちなんですね。」
車を運転する佐野主任は似合っていて、なんだか遠い存在に思えた。
「いや。これは借りてきた。
迎えが徒歩なんてかっこつかないから。」
居心地が悪そうに頭をかく佐野主任は髪までカットしていて、いつものだらしない感じがなくなっていた。
だらしなくてもかっこいいと思っちゃうくらいの人なのに、なんだかずるい。
あれから心配してくれた佐野主任には元彼と復縁したことは伝えてあった。
「どうして迎えに来てくれたんですか?」
「どうしてって……それ聞くか?」
再びの居心地が悪そうな佐野主任は口元を手で覆ってそっぽを向くと外を眺めた。
そして外を見たまま呟くように言った。
「実はな……。
今度、見合いすることになってな。」
そっか。そうなんだ。
「お幸せに。」
新調していそうなスーツ。整えられた髪。
小綺麗になったのには見合いのためなのだろう。
「あぁ。ま、まだ会ってもないがな。」
信号待ちの車はまだ動き出さない。
静かな車内は小さく洋楽がかかっている。
それを口ずさむ佐野主任に心からの言葉を贈った。
「佐野主任なら大丈夫ですよ。」
信号が赤から青に変わって動き出した。
佐野主任とは別々の道を歩く、その始まりみたいだった。