切なそうな顔を向ける隆弘に胸が痛くなる。

「忘れられなかったから。
 あの時は全てに朋花がいて全てが君色だった。」

 それは私も同じ。
 私はそれが嬉しかったのに隆弘はそれが嫌だったんだ。

 胸が痛くてただただ隆弘の話を聞いた。

「そのことに怖くなったんだ。
 あの時の俺はひどく臆病でいつか朋花なしではいられなくなるくらいなら、その前に別れようって。」

 そんな理由だったなんて………。
 そのために私はずっとずっとつらい日々を送った。5年もずっと。

「自分の決意を変えたくなくて携帯も変えた。
 住む場所はちょうど就職する時だったしね。必要に迫られて変えた。
 俺の世界から朋花を無くして就職してがむしゃらに仕事をした。」

 がむしゃらに仕事したのは同じ。
 隆弘を考えないように、考えないようにって。

「今は仕事にも慣れてふと朋花を思い出すんだ。
 好きじゃないのにコンサートについて来てくれる朋花。
 激辛にしたいくせに遠慮して甘口カレーを食べる朋花。
 色褪せるどころか日に日に輝きを増して。」

「それは思い出を美化させてるから?」

 私もそう思った。
 それでも再会した隆弘にときめいていた……それは昔と重ねていたのかよく分からないけど。