考え事をしながらトイレから席に戻る時に見てしまった。
 佐野主任が女の人に声をかけられているところを。

「私達と飲み直しません?」

 思わず物陰に隠れてしまった。
 別に同僚なんだから隠れる必要ないのに。
 だいたい何が不特定多数にフェロモンが出てないのよ……。

 そう思っていた朋花に佐野主任の声が聞こえた。

「悪い。俺、一緒に来てる子を口説いてる最中なんだ。」

 一緒に……来てる子…。

 口説かれてましたっけ??
 よく分からない疑問が浮かんで、だけれど耳はまだ傾けている自分に苦笑する。

「いいじゃない。
 脈なしなんじゃない?
 私達と遊びましょう?
 先に行ってるから後から来て〜。」

 佐野主任なら私と解散した後に行きそうだよね。
 期待を裏切らないな。
 勝手な想像をしていると予想に反する答え。

「悪い。
 かなりあの子に参ってるから。」

 何……それ。