今日はお店に先に入ってるという隆弘を見つけて席に着いた。

「遅かったね?シャワー混んでた?」

「えっと、ううん。
 それより何を食べるの?」

 隠さなくてもいいのは分かってる。
 なのに「俺なら元彼みたいに黒谷を泣かせたりしない」って言葉が浮かんで言いづらくなった。

 頼んだパスタを食べる姿は懐かしい。
 あの頃みたいにスプーンを使ってフォークに巻いている。

 その仕草をすっごく見てたみたいで笑われた。

「本場はスプーンを使わないらしいね。
 それでもこうやって食べた方が綺麗に食べれるんだ。」

 そうそう。
 そんなようなことを話してたな。

 一人懐かしんでいると不意に質問をされた。

「本当に付き合ったりしてなかった?」

 急に確信を突くような質問でギクリとする。
 視線を泳がせて俯いた。

「……私は好きだったんだけどね。
 言えなかったの。
 あなたは人気者だったから。」

 人気者だったのは本当。
 隆弘は気づいてなかったみたいだけど。

「そうだったんだ。
 モテてた記憶がないなんて損した気分だな。」

「ふふっ。そうね。」

「しかも君に好かれていたのに気づかない大馬鹿者だったんだね。」

「大馬鹿者って………。」

 予想していなかった展開に胸が騒いだ。
 聞きたかったはずの言葉が待っていると思うのに、続きを聞きたくない自分がいた。

「これも何かの縁だからさ。
 俺たち付き合ってみない?」

「えっと…。」

 言葉を濁す朋花に隆弘は軽く笑って言葉を加えた。

「いいんだ。返事はすぐじゃなくて。」

「……考えさせて。」