月曜に会社に行くと未紗が一番に話しかけてきた。

「昨日はありがとうございます。
 仕事、無事に済みました?」

「えぇ。佐野主任に夕食ご馳走させたから大丈夫よ。」

 隠すことじゃないしね。
 自然にしてた方がいいよね。

「いいな〜。
 私もご馳走にありつきたかったです。」

「おいおい。
 黒谷には手伝わせた礼なんだよ。」

 いつもみたいに普通に会話に参加されてドキリとする。

 いやいやいや。

「まぁ……。
 お2人の邪魔しても悪いですよね。」

 いやいやいやいや。

「おっ。気が利くな。
 俺、黒谷だけだからな。なぁ?黒谷。」

「はいはい。言っててください。」

「そうですよ。黒谷先輩が佐野主任になびくわけないじゃないですか。
 寝言は寝てから言ってください。」

 いつも……通り。
 うん。いつも通りだ。

 佐野主任だっていつも通りで、昨日だってちょっといつもの延長を言われただけ。
 何を意識して………。

「あれ?黒谷先輩、顔が赤いですけど……。
 もしや!!」

 やだ。何?何?
 別に佐野主任に照れてるわけじゃなくて……。

「ジムでの新しい出会いを思い出してるんじゃないですか?」

 ジム……で……………。

「なんだよ。
 俺のことで赤くなったのかと期待したのになー。」

 残念そうに去って行く佐野主任に、大きな声で言いたい。いやいやいやいやって。

 そして自分にも大きな声で言いたい。

 いやいやいやいや。ないないない。