「朋花?
 どうしたの?そんなに疲れた?
 げっそりした顔をしてる。」

「あ、うん。ちょっと疲れちゃった。」

「じゃ帰ろうよ。帰り道にすっごく美味しい激辛料理店を見つけたんだ。」

「本当?行く!行く!」

 こういう時こそ辛い物でも食べてストレス発散しよう。
 それに、とにかくこの場から逃げてしまいたかった。

「朋花はさー。
 隆弘が忘れられないんでしょ?」

 ゴホゴホとむせ返ったのは料理が辛過ぎたせいじゃない。

「私達に心配させないようにしてるの丸分かり。
 瑛士がいると言いにくいかなぁと思って前は言わなかったけどさ。」

 バレバレだったんだ。
 必死に隠してて馬鹿みたい。

「うん。だって……。」

 だって大好きだったから。
 そう思うのに、さっきの光景が思い浮かんで涙が込み上げた。

「ごめん。そんなにつらかった?
 言ってくれて良かったのに。
 好きでいればいいよ。」

「ううん。ごめん。
 辛くて目がやられただけだから。」

『からい』と『つらい』漢字にすると同じで今の私を全て言い表している気がした。
 美味しいけど、からい。つらいけど、好き。

 だけど隆弘に再会したことはまだ言えなかった。
 そしたら奈々のことまで言いたくなって、醜い嫉妬とか色々が溢れちゃいそうだ。

「もしかしてだけど………。
 隆弘と会ったりした?」

 えー!!!どうして?
 そこまで丸分かりなんて、私の気持ちはだだ漏れ?

「なんで分かったのー!って顔してる。
 何年の付き合いだと思ってるの。」

「翔子………。」

「急にそわそわしてて、さっきは急に落ち込むし。
 大学の頃と同じだもん。
 朋花にそんな顔させられるの隆弘だけでしょ?」

 そんなに……大学の頃から隆弘に対してそんな風だったんだ…。
 翔子は私のこと私より分かってくれているんじゃないかって感動した。

 それでいっぱい愚痴って、結局は奈々のことも話した。

「隆弘は自覚なしモテ男だからね。」

「だよね〜。」

「そういう朋花は自覚なしモテ女だけどね。」

「え?私は違うよ。
 変な人には好かれるなぁとは思うけど。」

「好きな人は普通1人しかいないでしょ?
 それ以外に好かれれば変な人ってことでしょ?朋花の場合は。」

 そうなるのかな。そうかもね。
 どんなに大勢の人に好かれたって意味ないよ。
 ただ1人の人に好きになってもらえればいいんだから。

「隆弘は自覚なしモテ男なのは分かってるんしでしょ?
 それならたまたまだよ。たまたま。」

「まぁねぇ。
 隆弘ならそれが有り得そうで。」

「だいたい記憶を無くしてるってさ。
 都合いいくらいじゃない?
 惚れさせればいいんだよ!」

 ハハハッと笑っておいた。

 男前って翔子みたいな子のことを言うんだよって隆弘に言ってやりたくなった。