隆弘を忘れられないと思い続けて5年。

 もうそろそろ潮時かもしれない。
 見合いでも合コンでもなんでもしなきゃ。

 あぁ。
 そのためには体をなんとかしよう。

 翔子は羨ましいことばかりを口にする。

「私、ブライダルエステ頼んじゃったよ。」

「はいはい。好きにしてください。」

 羨ましいからってブライダルエステだけしてもね。
 まずは相手を見つけないと。

 いや。まずは体だった。
 つまめそうな横腹と二の腕のままじゃ新しい恋なんて降ってこないに決まってる。

 朋花はそこそこ有名企業の柏木ハウスに勤めていた。
 会社は住宅メーカーで、仕事は事務だから運動不足になりがちだ。
 朋花もご多分に漏れず運動不足だった。

 さぼってたなぁ。色々と……。
 そこまで考えて視線は瑛士の肘の下へ。

「ねぇ。それ何?」

「あぁ。これ?」

 瑛士がテーブルへ無造作に置いたチラシ。
 腕の下敷きになって可哀想にしわくちゃだ。
 瑛士の腕の隙間から売り文句が見えた。

『スポーツの秋!
 入会金無料サービス実施中』

 まさに必要としていた情報!!

「さっきその辺で配ってた。
 新しく出来たスポーツジムみたいで人気らしいよ。
 ジムで出会いっていうのも良さそうだな。」

「そのチラシもらってもいい?」

「あぁ。俺、ジムに行かなくてもムキムキだから!」

 自慢げに胸を張る瑛士に翔子と2人でつっこんだ。

「体のたるんだ体育教師なんて絶対に教わりたくない!」

 瑛士はハハハハッと軽い笑いをして頭をかいた。

 よく見た光景だった。
 瑛士にいつも隆弘がつっこんで。
 それを真似するみたいに私や翔子もつっこむようになって。
 
 男女共に仲がいいサークルだった。
 学部が違う人とも仲良くなれて、本当に楽しい思い出がいっぱい詰まっている。

 そう。楽しいはずなのに隆弘が浮かんで胸が痛くなることは寂しかった。

 新しい恋でも始めれば全てを懐かしい思い出に変えれるのかな。