あてもなく、逃げて、逃げて、逃げて。
それでも、熱は一向に引いてくれない。
本当に今日は、とことんツイてない。
最悪な日だ。
「好きじゃない、好きじゃない、好きじゃない!」
叫びながら、廊下を無我夢中に走っていく。
あんな俺様、好きなんかじゃない!!
あんな、見た目だけの男なんか……!
嫌い、だ。
そうもがきつつも、唇に残った温もりと感触があたしの心臓を刺激した。
まるで、たちの悪い、毒。
なぜキスしてしまったのか。
黙らせる方法は、他にいくらでもあったはずなのに。
『問題です。能登玲奈と赤城晴はなぜキスしてしまったのでしょう』
――答えは、まだ、ない。



