正気に戻った時には、すでに遅い。



あたし、今……。


キス、した?

こいつに、あたしから?



唇を離し、真ん丸になった瞳には、同じく目を真ん丸にしている赤城の美形がドアップに映り込む。


反射的にネクタイを放し、椅子から立ち上がって後ずさる。



教室で一部始終を傍観していたクラスメイトも、驚きを隠せない様子であたしと赤城を交互に見ていた。




急激に熱を帯びて火照っていく全身に、思考回路がショート寸前になる。



やばい。

何が、かはわからないけど、とにかくやばいのはわかる。



バカなのは、あたしだったらしい。




「あ、あんたのせいだから!!」




あたしは真っ赤な顔を俯かせて、状況をさらに悪化させるような八つ当たりを投げつけた。


そのまま逃げるように、教室を飛び出した。




「…………はっ!?」



数秒遅れて、

赤城がうろたえ、赤面して戸惑ってる、うぶな姿など知る由もない。