あたしの毒舌をここまで真っ向から受けていながら、あたしから距離を置かずに接してくる人は、初めてだった。
クラスメイトも、幼なじみも、親友だった子も、みんな耐えられなくなって、離れていったのに。
思い描いていた“妄想の彼”とは大違いだったけれど、1か月と変わらず、なぜだかあたしの濁り切った心を軽くしてくれる。
バカが相手だと、何も考えずに済んで楽だからだろうか。
自分自身の感覚がおかしくて。
なんとなく嬉しくて。
「ふふっ」
無意識に、笑みが漏れた。
不意に、赤城と目が合う。
「何ジロジロ見てんの?キモい」
「笑うと意外と可愛いな」
意外と、が余計なんだよ。
って言い返したかったけど、他のことに頭がいっぱいになって、できなかった。
笑う……?
あたし、心から笑ってた?



