もしかしたら、俺の良さを広めるとかどうとか言ってたのは、あたしを励まそうと笑わすために言ってくれたのかもしれない。
また会えたら、名前を聞いてみよう。
――あたしにしては珍しく、そうポジティブに思っていた。
先ほどまでは。
「あんな奴だったなんて……」
1か月間妄想を繰り広げていた結果が、アレ。
ただのナルシスト。
マジでないわ。
名前聞かなくてよかった。
もう二度と関わりたくない。
「はぁー、ツイてない」
「玲奈、お前の今日の運は最高だ」
「……え?」
「俺様に選ばれたんだからな!」
頬杖をついて瞼を伏せていたあたしの頭上から、聞きたくなかった声がして、恐る恐る眼を持ち上げる。
あたしの席の目の前で、噂のナルシストが立っていた。
なんでここにいんの!?



