終わりで始まる進化論~第一部~


 コツン、と男がつま先で床をノックすると3D映像だろうか、半透明の女性がナツキの目の前に現れたのだ。






白人種系だろうか肌理細やかで白い肌にナツキと同じマロンクリーム色の髪を、髪留めでまとめている。






年齢にとしては三十代くらいだろうか、整った容姿ではあるが、その瞳は一切の光も映し出してはいなかった。






しかし、その女性の姿を見た瞬間にナツキの表情は固まってしまう。







「嘘だ。何で?こんな事……ある訳ない」





 一歩、二歩、三歩、後ずさりをしながら冷静に努めようとするが、目の前にいるのは紛れもなく幼い頃に死に別れた母親の姿だった。








「母さん、どうして?だって、母さんは……」





「ンフッ!驚きましたか?ミスターナツキ!そう。あなたのお母さまネイティア=ノースブルグですよう。会いたかったのでしょう?ンフッ。ワタクシはあなたの事なら何でも分かるのですう!さあ、お母様との再会を、そして永遠の時間をプレゼント致しますう!」









「ナツキ、いらっしゃい。私の……ナツキ」







 変わらない母親の声で手を差し出されると、吸い寄せられるようにナツキもまた手を伸ばしていく。








そうだ。これからまた二人で暮らせる。長かった寂しい時間を、ゆっくりと二人で埋め合わせながら、永遠の時間を。