彼の腰をチラと見てしまったことがあった。
20代カップルにしては珍しいのかもしれないけれど、お互いの個人的なトラウマスイッチを考慮して、私たちは着替えを必ず別室で行うようにしていた。
風呂上がりも上着までしっかり着こんでからしか部屋へは戻らなかったし、一緒の布団で寝るからといってわざわざ1度着た服を脱ぐなんて真似もしなかった。
 
私には私の「気持ち悪い」事情があって、彼にも彼で「見せたくない」事情があった。
その彼がひたすらに隠し続けているものを、私はもう知っていた。
激務続きの時、彼は湿布を背中や肩に貼っていることがあった。
そういう時はいつも上の服はすべて脱いでいて、華奢だけれどそれでも広い背中が見える。
傷一つなく毛穴だってロクにないような綺麗な白い背中をほれぼれと眺めていたら「照れるじゃん」なんて軽口を返してもらえたし、そのままハグを求めたら正面から抱き締めてもくれた。