月が綺麗ですね

──羽田で副社長をピックアップして二人でお通夜に出席し、今私たちは帰りの車の中にいた。


「今日はもう最終便には間に合わないから、羽田の近くのホテルに泊まる」

「はい、すぐに予約をします」

「ああ」


私は急いで副社長が指定したホテルに予約の電話を入れる。


「あいにくシングルがいっぱいでツインしか空いていませんでした」

「分かった。それでいい」


するとハンドルを握りながら木下さんが副社長に問いかける。


「時間も遅いですし、進藤さんは私がマンションまでお送りしますか?」

「いや、彼女にはまだ仕事がありますから、タクシーで帰ってもらいます」


えっ!?まだ仕事があるの?

腕時計を見ると、22時を回っている。


「分かりました」

木下さんは答えた。