月が綺麗ですね

「無理すんなよ」

「ありがと」

「なあ、風花。俺さ...」


ブーブー!!


鞄の中の社内用携帯が震えた。


「あっ、ごめんね」


私は鞄の中から携帯を取り出すと、副社長からだった。


『大口さんのお通夜に出席する。急いで役員用玄関まで来い』画面にはそう表示されていた。


えっ、お通夜!?突然のことに一瞬戸惑う。そんな連絡私には入ってない。それに出席”しろ”じゃなくて、出席”する”?

副社長は北海道のはずなのに?


「ごめん。オフィスに戻らないと駄目みたい」

「どうしてだ?六ツ島さん出張だろ?」

「うん、そのはずなんだけど...?とにかくオフィスに戻って、それで代理でお通夜に出なくちゃ。飯塚さんもいないから私が出席することになるよね」


副社長は急いでいて、文字を打ち間違えたのかも知れない。

きっと出席しろだ。私はとっさにそう解釈した。