月が綺麗ですね

私たちは肩を並べながら、まだ夜には少し早い街を歩く。


「俺も早く帰るの久しぶりだわ」

「お互い忙しいもんね」


弘くん機嫌がいいみたい。お昼のこと気にしてないのかな?

わざわざ蒸し返すのも何だし、私は忘れることにした。



そして私たちはオフィスから近い居酒屋へ入った。彼はもう少し気の利いた所に入ろうと言ってくれたけど、弘くんも独り暮らしだ。都内に部屋を借りるにはそれなりにお金がかかってしまう。

私も独り暮らしだから、その大変さは分かる。だから彼にはやっぱり負担をかけたくなかった。


「かんぱーいっ!!」

ガチンとビールジョッキが重なり、泡が弾ける。


「んー、美味しいっ」

「お前、そんなに強くないんだからイッキすんなよっ」

「平気、平気」


ゴクゴクと私はビールを喉へと流し込む。


「ビールお代わりっ!」

「日頃のうさ晴らしか?」

「ねぇ、弘くんと飲むの久しぶりだね」

「会話になってねえし」


呆れながら弘くんは焼き鳥へと手を伸ばす。