月が綺麗ですね

昼食を終え秘書室に戻ると、そこはガランとしていて人影は無かった。


「みんな外出か...」


ポツリつぶやくと、椅子を引く。


午後は副社長にアポを取るための社外からの電話対応がほとんどだった。

役員への外線は一度総合受付から総務部を通すことになっている。ブラックリストに載っている相手に関しては総務で止められるが、それ以外は全てこちらに回てくる。

電話機が派手な音をたてて、総務からの内線を知らせるランプを光らせる。

受話器を取ると、

「はい、進藤です。...分かりました回して下さい」

朝から20件以上は来ている。



「申し訳ございません。その日は一日予定が入っております」

「六ツ島に確認して、折り返しご連絡致します」

「日程的に厳しいのですが、調整致します。いつまでにご連絡すればよろしいですか?」


等々、対応は相手によって様々。

仕事関係以外にも、例えば金融、絵画、不動産の投資の電話まで掛かってくる始末。正直、仕事とは関係ない雑務を増やさないで欲しいのだけれど、三浦さん曰く、『それも仕事』だそうだ。


どうも納得がいかないなぁ。だってそんな電話がなければ、本来の仕事がかなりスムーズに進むはずなのだから。


でもそんな電話でも相手を不機嫌にさせないようにしながら丁重に断らなければならない。しつこい相手もいるので結構苦心してしまう。