「弘くんは好きな人いないの?」

「...別に」

「そっか。私に教える義理も無いしね」

「何かお前、ウジウジしててムカつく。それにさっきから言葉に剣がある」

「えっ!?」


確かに弘くんに甘えてしまったと言うか、慰めて欲しくて言葉の端々にそんなニュアンスを醸し出していたかも知れない。



「俺が『...好きな女を取られて何も出来ない情けない男だ』とでも言えばお前は満足するのかよっ!?」

「...そんなこと」


突然の荒い口調に私は驚き戸惑ってしまう。


「学生時代だったら、俺は間違いなく六ツ島さんに挑んだと思う。だけど、社会人だと出来ないことだってあるんだよっ!!」


おもむろに立ち上がると、乱暴にトレーを持ってその場を後にする弘くん。


「...こ、弘くん?」


ど、どうしたの、突然?

唖然とする私は立ち去る彼をただ見送ることしか出来なかった。