月が綺麗ですね

だってみんなの作り笑顔が怖いんだもの。

さすが秘書室と言うだけあって綺麗な人ばかりだ。けれど一様に口角を上げて目を細め満面の笑みで拍手をしているその表情は、言葉は悪いけれど、どいつもこいつも同じ顔に見える。まるで能面を被っているように。


そしてパチパチと一定のリズムを刻む拍手をする手は、指の先までピンと伸ばされ左手に右手を軽く添えている。角度まで揃っているではないか。これは訓練されたものだろうか？


しかし何なのこの空気？
むしろ薄気味悪さを感じてしまう。



「じゃあ、自己紹介してくれますか？」


おじ様の声で私は我に返った。


「あっ、はい。営業三課から来ました進藤　風花です。よろしくお願い致します」


一同を見回した後、私は頭を下げた。


「歳は？」


誰からか、問いかけられた。


「はい、２８歳です」

「そう。この秘書室では一番若いわね」

「ふ～ん」


歓迎ムードの雲行きが怪しくなるような声がチラッと聞こえた。


...？