月が綺麗ですね

すべての答えはこの扉の向こうにある。

不安だけれど、いつまでもここに立っているわけにも行かないし、ってことで大きな深呼吸をひとつ。


「よしっ」

気合を入れてガラスの扉を無駄なくらい力を入れて押し開ける。


明かるい光の射す室内に顔を向ければ、「ワーッ」と歓声が上がった。


思わずドキンと心臓が跳ねる。


「ようこそ」の声と共に、秘書室の皆々様が立ち上がり、私に歓迎?の拍手と笑顔を送ってくれている。


へっ!?



驚きのあまりポカンとその場に立ち尽くしていると、パリっとしたスーツを着た50代くらいのダンディーと言う単語がピッタリなおじ様が私の横まで歩いてくる。そして彼女たちの方へ向き直る。


「今日から皆さんの仲間入りをする進藤 風花(しんどう ふうか)さんです」


「よろしくねっ」


その声がまるで合図のようにあちこちから「よろしく」のオンパレード。そして鳴りやまない拍手。


何?何?この慇懃な対応は?


嬉しさと恥ずかしさの反面、妙な違和感が私を襲う。