月が綺麗ですね

あとで西山さんに事情を説明しに戻って来よう。

そう思っていると、

「もしお前が俺の彼女だったら新品を買ってやるのだが、彼女ではないからな」


眼鏡の奥の切れ長の瞳が少し意地悪な光を宿した。

まあ副社長のおっしゃることは正論ですね。

それでも私は3着もスーツを用意してくれた副社長に謝意を表した。


「着替えたら、すぐに俺の部屋に来るように。頼みたい仕事がある」

「はいっ」


エレベーターを降りると、私が副社長と別れ給湯室の前を通った時だった。


「進藤さんっ」

名前を呼ばれ、またしても腕をつかまれたかと思うと、グイっと給湯室の中に引き込まれる。


「きゃっ」

「何が『きゃっ』よ。可愛い子ぶっちゃって」


そこには私を睨みつける飯塚さんと...。