月が綺麗ですね

副社長は服装だけではなく、様々な物事のセンスを極めているのかも知れない。

そう思った。


ひと口含めば、温かいお茶は私の緊張をゆっくりとほぐしてくれる。


...もしかしたら、これは副社長の心遣い?


カップの中の液体を見つめながら、何故かじんわりと心が温かくなるのを感じていた。


そして見るなと言われている副社長へ無意識に視線を移すと、彼は相変わらず水と戯れている。


案外いい人なのかな?


こんな些細な心遣いでキュンとしてしまっては、秘書室のお姉さまがたにライバルとして名乗りを上げるみたいでちょっと嫌。私は思わず、邪念を振り払うように首を振ったのだった。