月が綺麗ですね

クルリと背を向けて歩き出す副社長の背中を追った。広い駐車場には数台の車が止まっている。

グレーの外国車の前で停まると、「乗れ」短く命令される。


乗れって...ど、どこに?

後ろ?それとも助手席?


オドオドしながら助手席と後部座席の間でもたもたしていると、


「秘書は助手席だ」

「は、はいっ」

「俺は彼女以外の女のエスコートはしない主義だ」

冷たく言い放たれる。


別に彼女だとは思ってないし、エスコートしてもらいたいとも思ってませんけど。

内心で吐き捨てる。

ただ、こんな場合どうしたらいいのか分からなかっただけですから。