月が綺麗ですね

副社長の視線は私の全身を捉えている。

な、何?

その鋭い視線に私の心臓はドキンと跳ねる。


「お前のそのスーツ、就活の時のものだろう?」


へっ!?スーツ?


「生地にツヤは無いし、ジャケットのひじはテカっている。おまけに上から二番目のボタンは取れかかっていて、スカート丈は学生が好む膝上10cm。どう見ても年季の入った代物だ」


...おっしゃる通りです。


「異動が急で、買いに行く暇がありませんでした」

「言い訳をするな。アパレルの仕事をしている人間がその恰好では少々問題がある」

「明日、買いに行きます」

「そうしてくれ」