月が綺麗ですね

それから数時間。引き継ぎ書を読み返したり、メールの返信の仕方を三浦さんから教わったりして、あっという間に定時を迎えた。


「帰ってもよろしいのでしょうか?」

三浦さんに問いかけると、「駄目に決まってるでしょ」即答されてしまった。


「上司より先に帰ってはいけないの」


彼女の笑顔が怖い...。
帰ったら殺すわよ。そんな雰囲気だ。


「.....」

「副社長がお帰りになったら、部屋の掃除をしてから帰るの」

「えっ?掃除は業者がしてますよね?」

「役員室に業者は入れないのよ。もし機密が漏れたら大変でしょ?」


確かにそう言われればそうだ。


私の仕事はなくても上司が仕事をしていたら帰れないなんて、なんだか時間を無駄にしているみたい。


少しふて腐れ気味に椅子をブラブラと左右に回したら、三浦さんに怒られてしまった。