月が綺麗ですね

「だが、お前を苦しめたことには変わりない。お前を守れなかった俺が悪かった。香奈のことは俺の口から言うべきじゃないと思っていたんだ。あいつにとって辛い過去だったし、あいつの口から言うべきだと思っていた。だから言葉足らずでお前を苦しめた。俺が悪かった」

彼は私の体を更に強く抱いた。

私がひとりで騒ぎたててしまったのに、あなたは私に優しいんですね。


「徹さんは悪くない。むしろ私のほうが...」

「もう、本当に俺からすり抜けるなよ。そして、俺を信じてくれ」

愛おし気に私を見つめる瞳に、私の胸はさっきから鳴りっぱなしだ。


「これからも様々な表情の風花を見ていきたい」


重なる胸からは彼の熱い鼓動も伝わってくる。


風に舞う桜の花びらに包まれながら私は誓った。

「もうあなたのそばから絶対に離れません」



もつれた糸を無理に引きちぎってしまえばそれで終わってしまうのに、
ほどけばこうしてまた元に戻る。

私はあなたと向き合うことを拒否してその糸を切ろうとしたのに、あなたは糸をたどって、こうして私を迎えに来てくれた。

あなたにどれだけ愛されているのか今更ながらに思い知らされました。

私は徹さんの胸に抱かれながら、そっと瞳を閉じた。