月が綺麗ですね

三浦さんはガサガサと包装紙を開けると、


「最中ね。でも残念だなぁ...」


20個入りのひとつをつまむと、顔の前で裏表を確認する。


高級な部類に入る老舗和菓子店の最中だった。


一体何が残念なのだろう?


「副社長餡子はお好きなのだけれど、粒あんはお嫌いなの。この最中は粒あんでしょ」


大抵の最中は粒あんだ。鶯あんとかちょっと特殊な場合はこしもあるけれど。
目の前にある最中は間違いなく粒あん。


「これでは秘書失格ね」


三浦さんは吐き捨てる。


「相手の好みを正確に把握していないと駄目よ。せっかくお土産を差し上げても、かえって失礼になってしまうわ」


私は無言で深く頷いた。


「これは私たちで頂きましょう」